「田宮模型全仕事[増補版]」1 株式会社タミヤ編
少年時代にこの会社の製品のお世話にならなかったという人はほとんどいないのではなかろうか。
本書は、世界に誇るプラモデルメーカー「タミヤ」がその70年の歴史で世に送り出してきた約2000ものスケールモデルの完成品とパッケージを紹介、解説したビジュアルガイドブック。16年前に刊行された人気シリーズの増補版だ。
全3巻のシリーズの先陣を切る本書は、同社のプラモデルの原点ともいえる戦車をはじめとする軍用車両など、約700点を網羅した「ミリタリー編」である。
プラモデルが海外から輸入され始めた昭和33(1958)年ごろ、日本の模型はまだ木製だったが、電池とモーターを動力にして、布団の上も乗り越えていく戦車の模型は、実感もあり人気があったという。
そうした下地の上に、木製模型からプラモデルメーカーに転業した同社が、1962年に発売した「ドイツ パンサータンク」(写真①)は、挿絵画家の小松崎茂のボックスアートとの相乗効果で大ヒットを記録する。電池を搭載するために決まった車体の大きさが、後から測ってみると大体1/35だったので、それまで欧米になかった1/35スケールが生まれたという。後にこの1/35スケールがミリタリーモデルの世界的標準スケールとなるほど膨大なシリーズへと発展していく。
その発展の一翼を担ったのが、兵士などのミリタリーフィギュアや、装備品、装甲を持たない車両(ソフトスキン)などのミリタリーミニチュアシリーズで、現在まで約350作を数える。このシリーズによって、それまで動かして楽しむのが主流だった模型の世界が、情景づくりや、コレクション、情景写真撮影へと無限に広がっていった。その歴史の転換点となったのが「ドイツ戦車兵セット」(1968年=写真②)だ。
パンサータンク以降、同社の戦車はすべて動力で動くモーターライズだったが、1967年には完全スケールディスプレーキットを発売。「アメリカ空輸戦車 デストロイヤー」で始まるこのシリーズは、1/50スケールポケットミュージアムと銘打たれたシリーズだ。
もちろん動く模型も進化。1/16 R/C(ラジオコントロール)タンクシリーズはその大きさとともに、砲塔の動きを自動的に制御するシステムなど、本物そっくりの動きを実現している。昨年には同シリーズのラインアップに陸上自衛隊の「10式戦車」(写真③)も加わった。
まさに日本のプラモデルの歴史が一望できる一冊。かつて夢中になったあの戦車、そして子供と一緒に作ったあのキットが次々と現れ、時間を忘れて見入ってしまう。車を中心とした第2巻、船・飛行機を集めた第3巻も楽しみだ。(文藝春秋 3250円+税)