「民主主義をどうしますか。」山口二郎著
民主主義の危機を訴える人々の声が高まっている。立憲主義の基本を理解しないまま、反対派や少数派の存在そのものを否定し、異を唱える言論に圧力を与える政権のやり方が、近年ますます目立つようになってきたからだ。本書は、民主主義の危機を憂い、安保法制反対全国一斉行動や立憲デモクラシーの会で問題提起を行う政治学者による評論集だ。
安倍政権の暴走を止めるためには、「自民党ではない」という受け皿の党をつくるだけでは十分ではないと著者はいう。民主党が異質な要素を抱え込みすぎて自壊したことや、脱原発を掲げる勢力が社民党やみどりの風、みどりの党に分裂して有能な政治家が敗退したことを顧みても、ただの受け皿づくりも結果度外視の弁論大会も現実的な力にはならず、この中間にあるのが政治のリアリズムであると著者は訴える。
選挙やメディアのあり方、野党の課題、市民に必要な政治的態度など、民主主義の根本に関わる題材に真摯に迫っている。(七つ森書館 1800円+税)