「青玉の笛 京都市井図絵」澤田ふじ子著
女衒頭の七蔵は、仲間と丹波篠山で買い集めた女を連れ、京の北野遊郭へと向かう。道中、僧が七蔵に話しかけてきた。南禅寺の月窓と名乗る僧は、5人いた女たちの1人、お桂が異相をしていると言いだす。彼女は時期がくれば邪悪を退け、多くの人に幸せや益をもたらすはずだと言い、楼主を選んで通常の数倍の30両で引き取ってもらえと言うのだ。半信半疑の七蔵だが月窓は、彼が7歳のときに井戸に落ちたことを言い当てる。
七蔵は、北野遊郭の冨士屋の楼主・徳右衛門に、月窓の話を正直に明かす。徳右衛門は、代金の代わりに若い客が家から持ち出した茶道具や掛け軸で遊ばせてやる骨董好きで知られていた。(「因果な茶杓」)
骨董品を巡る人間の業を描いた短編集。(光文社 660円+税)