「男の詫び状」野坂昭如著

公開日: 更新日:

 平成15年に脳血栓で倒れてから、長期にわたってリハビリのかたわら執筆を続け、昨年末に亡くなった野坂昭如。本書は、そんな野坂が「通販生活」の紙上で交友のあった著名人との間に交わしたやりとりを単行本化したもの。岸田今日子、妹尾河童、阿川佐和子吉永小百合、小沢昭一、永六輔、筒井康隆、横尾忠則らからの病気見舞いとして書かれた手紙に、野坂が闘病を感じさせないキレのある返答で応えていく。

 たびたび手紙に書かれるのは、野坂自身の戦争体験だ。「今の日本は危なっかしい。戦争がすぐそばにある状態。ぼくらには戦争を語り続ける義務がある」と憂い、「このまま行けばまた同じあやまちの繰り返しか」と戦争を伝え切れなかった昭和ヒトケタ世代の後ろめたさを語る。

 最後の手紙は、野坂の妻からすでに亡くなった野坂にあてて書かれたもの。酒が好きでちゃめっ気たっぷりな野坂の素顔、最後まで物書きとしてメッセージを残そうとした姿をつづっている。(文藝春秋 1600円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭