「都会の里海 東京湾」木村尚著
長年、東京湾の再生に尽力してきた著者が、その魅力を伝えるエッセー。
東京湾は、神奈川県観音崎と千葉県富津岬を結んだ線の北側が内湾、それより南側から神奈川県剱崎と千葉県洲崎を結んだ線までを外湾と呼び、総面積は約1380平方キロに及ぶ。内湾は比較的浅いが、外湾はいっきに600メートルまで水深が深くなる。河川から流れ込む水と海水が混ざり生み出す豊富なプランクトンによって、約700種もの魚が暮らす豊かな生態系を形成する東京湾は、世界でも希有な存在なのだという。
一方で沿岸や河川流域には3000万人が暮らしており、さまざまな形で東京湾はダメージを受けている。かつて「死の海」と呼ばれながら蘇った東京湾の「今」を解説する。(中央公論新社 820円+税)