「翳りの城」三吉眞一郎著
元亀3(1572)年、武田信玄は、大軍を率いて上洛を開始。主力部隊の側面、東遠州方面攻略を命じられた剣崎弦馬が兵を率いて進軍中、天明山山麓に奇妙な城を見つける。家康が急ごしらえした出城と思われた。城は無防備で、石垣をただ垂直に積み上げ、その高さだけが際立ち、人影は見えない。空城ならば焼き払うだけと、剣崎は翌朝、800の兵で攻撃を仕掛ける。
しかし、大手門まで兵が進撃すると、石壁に巧妙に設けられた矢狭間から一斉に矢が降り注いできた。多くの犠牲を出しながらも大手門を突破し、槍部隊が城内に突撃する。しかし、いつまでたっても剣崎に落城の知らせは届かない。
「人を食らう城」と武田軍の死闘を描く時代バイオレンス。(竹書房 700円+税)