夫婦の「共有名義」の不動産に意外な落とし穴
離婚の話し合いで協議される内容は、浮気などの有責事項があった場合は慰謝料、子供がいる場合は親権や養育費が争点になることが多く、不動産問題は後回しにされがち。しかしもっともトラブルの種となり、対処法を知らず感情のままに突き進むと破産にまでつながるのが、この不動産問題だ。
高橋愛子著「離婚とお金 どうなる?住宅ローン!」(プレジデント社 1200円+税)では、数多くの離婚問題に携わってきた不動産コンサルタントが、破産の危機を招く不動産問題のケースを紹介している。
夫婦で資金を出しあったりローンを借り入れて住宅を購入した場合、土地と建物は夫婦の「共有名義」となる。この方法は税額控除など夫婦でいる間のメリットは大きいが、離婚で家を売却するときはとんでもないデメリットとなる。共有名義の不動産は、夫と妻、双方の承諾がない限り売却することができないためだ。
著者が担当する案件でもっとも厄介なのもこのケース。例えば、夫の浮気が原因で離婚となり、共有名義の家に妻が居座るという案件は少なくないという。売却益を分与するのが得策なのに、夫を苦しめたいという恨みで妻が売却を断固拒否するのだ。売却までの時間が長引けば不動産価値は下がり、ローンも払い続けなければならない。妻が失踪を図って連絡を絶ち、売却の承諾が得られないこともある。
住宅ローンが完済済みであっても、妻が家の「共有持分」を担保にして借金をすれば差し押さえられることもある。万が一、妻が再婚した後に亡くなれば、共有持分は複数の人に相続されてしまう。不動産の共有名義は、離婚を機に大きな悩みの種となるわけだ。
2分間に1組が離婚するという現在。とくに目立って増えているのが熟年離婚で、厚生労働省の統計でも20年以上連れ添った夫婦の離婚が大幅に増加していることが分かっている。考えたくはないだろうが、いざというときのために不動産の見直しをしてみては。