日本は既に「戦争ができる国」になっている。
「戦争責任は何処に誰にあるか」山本七平著
イザヤ・ベンダサン名義の「日本人とユダヤ人」で知られた著者が亡くなって四半世紀。しかし70年代から亡くなる直前まで日本の戦争責任問題については幾度も論文を発表してきた。本書はその初の単行本化。
昭和天皇崩御のあとに書かれた第2章では、日本人が天皇に抱くイメージと天皇自身の「立憲君主」の自己規定にはずれがあると指摘。日本の天皇は律令時代から太政大臣の決裁を認可するだけになっていた。つまり時の政治が院政であれ幕政であれ西洋的な立憲君主制であれ、政治の外に安全に身を置く仕組みがあった。著者は昭和天皇が明確にこれを意識し、明治憲法の「立憲君主」を順守したがゆえに「御親政」を唱えた二・二六の若手将校たちに激怒し、天皇の座を揺るがせにしないために「象徴」の地位を受け入れたと示唆。戦争責任問題にも、「生前退位」問題にも大いに関係しそうな論考である。(さくら舎 1600円+税)