日本は既に「戦争ができる国」になっている。
「日米安保と戦争法に代わる選択肢」渡辺治、福祉国家構想研究会編
トランプとプーチンにすり寄るばかりで無為無策の安倍政権。しかしその下で日本は既に「戦争ができる国」になっている。
著者名にある「福祉国家」とは90年代に始まる新自由主義型国家に対抗する国民本位の国家像。第1は憲法に定める人間の尊厳にふさわしい暮らしの保障。第2はそのための税・財政政策。第3は大企業本位を脱した地域に根ざす経済構想。第4は現状とは違う国と地方のあり方の構築。第5は原発廃絶による自然エネルギー政策。そして第6に日米軍事同盟の廃棄と憲法9条の具体化。つまり「戦争をしない」ことは当然保障されるべき福祉の一環なのだ。
この実現に向けた難問のひとつが「リベラル派」との共同の模索。脱日米安保を掲げる著者が明確に左派なのに対して、日米安保と自衛隊を容認するが安倍戦争法案には反対なのが「リベラル派」。戦争法反対で共闘しても安保と自衛隊で内部分裂すれば、かえって力は損なわれるからだ。
リベラルが掲げる自衛隊の「専守防衛」も実は内容が曖昧。これまで共闘重視の安保廃棄論者が避けてきた大事な論点を、逃げずに正面から見据えて迫った論考。著者は政治、経済、税、雇用など各分野の専門家からなる研究組織だ。(大月書店 2300円+税)