人間はあまり大きな顔をしてはいけなそう
「入門!進化生物学」小原嘉明著/中央公論新社 880円+税
「入門!進化生物学」というタイトルのこの本を読んでみたくなったのは、娘が大学で生物系の勉強をしていたからであった。しかし、節足動物群だけで百十数万種と書かれていると、あまりの数の多さに気が遠くなった。脊椎動物だけでも600万種余りだという。それも、動物界全体からみると全動物のわずか4%、さらにヒトを含む哺乳類の割合は例外的な希少グループとされているらしい。人間はあまり大きな顔をしてはいけないような気になってくる。
そもそも、進化とは何なのか? この本の帯に「奇妙な姿かたちも 進化のたまもの!」とある。奇妙とはどういうかたちをいうのか? それすらも、わからなくなってくるのである。
「入門!進化生物学」には、ダーウィンの進化説(進化論)についての詳しい解説が書かれている。一方、中立遺伝子についての解説もある。中立遺伝子のことを、私は何も知らなかった。ダーウィンの言っている自然淘汰をすり抜ける突然変異のことらしい。自然淘汰とは別に、偶然そのようなことも起こり得るということなのだろうか。とてもむつかしい。娘に聞いてみると「高校の教科書に出ているよ」そうさらりと言った。
1960年代後半、国立遺伝学研究所の木村資生さんが、かの有名な「ネイチャー」に論文を発表した。木村さんは、日本人唯一のダーウィン・メダル受賞者だという。
やはりこの本を読んでいて面白いのは、動物のさまざまな個性に触れられる箇所である。ジャコウウシは、オオカミの攻撃に対して、子供たちを守るために防衛の円陣を作り、その囲いに入れてからオオカミと対決する。かつての日本の軍部は、女子供も一緒に、「一億総玉砕」と叫んだという。なんという違いだろう。人間は、多くの動物たちから学ぶことがたくさんありそうである。