「猫と暮らす本」特集
「東京 看板ネコめぐり+猫島で猫まみれ」ineco著
空前の猫ブームだ。かつては犬の飼育頭数の方が多かったが、今や追い抜く勢いで、990万匹の猫がペットとして飼われている。その背景にあるのは、日本の住宅事情や、ライフスタイルの変化。散歩いらずで鳴き声も小さいと、猫を選ぶ人が増えているという。理由はさておき、猫が人々を癒やしてくれるのは確か。今回は、猫との暮らし方をつづった最新本5冊を紹介。
最近、看板猫のいる店や施設がにぎわっている。そんな看板猫たちをめぐるガイド本。
新宿にある「カフェ・ラヴァンデリア」には4匹の看板猫がいる。カフェを始めて数年後、近所のビルの管理人が愛護センターに連れていこうとしていたノラの子猫を店主が引き取ったのが、なれ初めだ。4匹の茶トラは性格はバラバラだが、見た目はそっくりで、店主も首輪の色で見分けるくらいだという。店には開店直後の14時から夕方まで勤務中だ。
上野にある、その名も「Bar猫」の看板娘は、アクビ。チェックの蝶ネクタイがお似合いの世界最小猫種のシンガプーラで、毎日店主と一緒に出勤し、訪れる客と一緒に過ごしている。
レジに鎮座する名物猫がいる「丸吉玩具店」(立石)など34店舗の看板ネコ、譲渡型猫カフェや駅猫、また巻末では猫が多いといわれる瀬戸内海や九州地方の8島を豊富な写真と共に紹介。(株式会社G.B. 1600円+税)
「幸せになりたければねこと暮らしなさい」樺木宏著 かばきみなこ監修
1万年も人と生活を共にしてきた猫には、「何となくかわいい」だけの存在ではなく、本質的に人を幸せにする力があるという。
そのひとつがストレス緩和力だ。猫と暮らすと、毎朝エサをねだられるが、猫の体内時計は正確なため、自然と規則正しい生活に導かれる。朝日を浴びることで幸せホルモン・セロトニンの分泌を促し、次第に心が安定していくのだ。また猫を眺めているとそのしぐさに笑う機会が増え、これもセロトニンアップに効果がある。事実、言葉を話せなかった重度の自閉症の少女が、猫と暮らすようになって言葉を話し出した例もある。
その他、「猫に学ぶ気軽な上下関係」「猫への褒め上手で人にも褒め上手になる」など猫と暮らすことで得られる数々のメリットを、保護猫7匹と暮らす著者が紹介する。(自由国民社 1300円+税)
「猫なんて!」角田光代ほか著
犬が好きか猫が好きかと聞かれるたびに、毎回、犬が好きと答えてきた角田光代さんのもとに、ひょんなことから、漫画家の西原理恵子さんのところの猫が産んだ子猫がやってきた。
台所でおとなしく座っていた子猫(トト)を膝に乗せると、「体を丸めて、ちいさな頭を私の手の甲にぽとりと落とし、眠るではないか。今までゆきずりの猫しかさわったことのない私は、感動のあまり泣きそうになった。なんてかわいいのだ、ああ、なんて、なんて」と手放しで喜んだ。そんな自分の人生に初めて深くかかわった猫との出合いをつづる。(「我が家に猫がやってくる」)
ほかに、片岡義男、横尾忠則、浅田次郎、長谷川町子、野坂昭如、伊丹十三、町田康など47人の作家と猫をめぐる短編集だ。(キノブックス 1500円+税)
「猫と田中」田中裕二著
爆笑問題の田中裕二の猫っかわいがりぶり満載のエッセー。
たとえば、朝起きたとき、猫のプルちゃんも著者とまったく同じ形で、手足の角度もぴったりに伸びをするのがカワイイ。テレビ番組に一緒に出演していた光浦靖子さんが中川翔子さんの猫を抱いたときにオシッコされたときのエピソードを紹介し、猫はおしっこされてもやっぱりかわいい。何を考えているかわからないのも、夜、黒目が大きくなるところも、もう飽きたはずのネズミのおもちゃを見せられて、「はいはい、やればいいんでしょ」と倦怠期の夫婦みたいになるところもカワイイ、と。
猫と三十数年つき合ってきた著者ならではの洞察と表現で、猫の魅力を語りつくす。そにしけんじ&田中の共作マンガ「猫漫才師」付き。(太田出版 1500円+税)
「猫の學校」 南里秀子著
猫嫌いな人は、意外や猫にはかえって好かれるのだそうだ。
猫は強制されるのが大嫌い。自分の意思でしか行動を起こさない。
だから、せっかく寝てるのにベッドの下から引きずりだされ、「ほうら、かわいいでしょ」と来客に抱っこさせようとしたりされるのは嫌い。猫との付き合いは引き算で、やらなくてもいいことはやらないこと。
猫との接触はなるべく静かにゆっくりとした動作で、猫に関心など持っていないかのように振る舞ったほうがいい。だから、自分から猫に近寄っていかない猫嫌いの人のほうが好かれるのだ。
留守番猫をサポートするキャットシッター歴25年の「猫プロ」の著者が、家族として幸せに猫と暮らす秘訣を伝授。(ポプラ社 820円+税)