北朝鮮の危険な動き 先入観にとらわれない真実の姿
「独裁国家・北朝鮮の実像」坂井隆、平岩俊司著
国際社会の批判と圧力を無視してミサイル発射の実験を繰り返す金正恩。とかく若く経験不足の独裁者が気まぐれに起こす行為とみなされがちだが、本書の著者はきわめて意図的な対米行為とみる。
実験を繰り返すことで米韓は高高度迎撃ミサイルシステムを充実させ、中国はこれを対中包囲網の強化と見て反発する。このしたたかな計算で、北朝鮮はみずからすり寄らずとも中国を自陣に引き込めるというのだ。
他方、中国にとって朝鮮有事を避ける非核化は重要だが、日本とは全く違った長期の時間軸で見ているという。また中国にとって北朝鮮を無理に非核化したところで、得られるものは多くないことも重要。それゆえ日米が中国に期待し過ぎないのが肝心。北朝鮮の国内事情についても通説どおりの恐怖政治は考えにくい、とみる。脱北者の増加も、食うや食わずのためではなく、厳しくなった不正摘発に追われた官僚の逃亡ではないかと説く。要は先入観にとらわれない多面的な見方ということだ。
公安調査庁で北朝鮮情報の分析にたずさわった元部長と北朝鮮情勢の専門家が対談形式で解き明かす独裁国家の実像。(朝日新聞出版 1800円+税)