【ブラックユーモア小説】貧困を食い物にする開発経済学者たちの内幕

公開日: 更新日:

 経済学者が書いた小説と聞けば、お堅い内容かと思ってしまうが、いい意味で予想を裏切ってくれる。何しろいきなり、ある海洋生物学者の勃起した性器の拡大写真が、あちこちの研究室で回覧されているという場面から始まるのだ。

 このスキャンダルで学者は辞表を提出、離婚調停のために弁護士を訪れる。続いて舞台は、国連の貧困撲滅プロジェクトに関わる経済学者のケープコッドでの豪勢な結婚式に移る。相手は任地先のベトナムで知り合った絶世の美女で、彼自らが貧困から救い出した格好だ。貧困問題と贅の限りを尽くす結婚式という奇矯な組み合わせは、物語が進むにつれ増幅していく。世界の貧困者数は減少の傾向にあり、このままでは豊かな国はアイデンティティーを失い、貧しい国は援助を受けられず、ひいては世界経済が収束してしまう。何とか貧困者の数を増やさなくてはいけない……。

 ここに至って、この小説が実は変種の経済小説であることが見えてくる。貧困を食い物にする開発経済学者たちの内幕を痛烈に描き、国連内の腐敗ぶりをも暴いている。

★先週のX本はコレでした
「待つ女」
マリー・ダリュセック著
藤原書店 2400円+税

【連載】書名のない書評「ゲンダイX本」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ

  2. 2

    永野芽郁“二股肉食不倫”の代償は20億円…田中圭を転がすオヤジキラーぶりにスポンサーの反応は?

  3. 3

    永野芽郁「二股不倫」報道で…《江頭で泣いてたとか怖すぎ》の声噴出 以前紹介された趣味はハーレーなどワイルド系

  4. 4

    大阪万博「遠足」堺市の小・中学校8割が辞退の衝撃…無料招待でも安全への懸念広がる

  5. 5

    「クスリのアオキ」は売上高の5割がフード…新規出店に加え地場スーパーのM&Aで規模拡大

  1. 6

    のんが“改名騒動”以来11年ぶり民放ドラマ出演の背景…因縁の前事務所俳優とは共演NG懸念も

  2. 7

    「ダウンタウンDX」終了で消えゆく松本軍団…FUJIWARA藤本敏史は炎上中で"ガヤ芸人"の今後は

  3. 8

    189cmの阿部寛「キャスター」が好発進 日本も男女高身長俳優がドラマを席巻する時代に

  4. 9

    PL学園の選手はなぜ胸に手を当て、なんとつぶやいていたのか…強力打線と強靭メンタルの秘密

  5. 10

    悪質犯罪で逮捕!大商大・冨山監督の素性と大学球界の闇…中古車販売、犬のブリーダー、一口馬主