「心を操る寄生生物」キャスリン・マコーリフ著、西田美緒子訳
人の心を微生物たちが操っているのではないか、という世界の最新研究を紹介した刺激的な科学読み物。
イギリスの寄生生物学者のジョアン・ウエブスターが名づけた「ネコとの危険な情事」といわれる奇妙な現象がある。ネズミは本来、捕食者であるネコに対して警戒心が強いが、おりの中でウサギとネコの尿を垂らして行動を観察したら、脳にトキソプラズマ原虫が感染し寄生しているネズミは驚いたことに、ネコの尿を垂らした場所の方に引き付けられその場に長くいたのだ。
そこで立てられた仮説が「寄生原虫がネズミの神経系を刺激してネコへの恐怖心を減らし、ネコに食べられることで結果、寄生原虫はネコへ宿替えし、自らの生存を図る」というもの。この原虫には人の約30%が感染しており、人格形成や自殺願望にも関わっているというから面白い。(インターシフト 2300円+税)