トランプ政権誕生の原動力になったアメリカ底辺層のリアル

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「ドラッグと分断社会アメリカ」カール・ハート著 寺町朋子訳

 貧しい黒人地域の7人姉弟の下から3番目に生まれ、高校時代まではクールガイを気取ってクスリや銃を試した著者。高卒後に空軍に入り、沖縄駐留時に大学の講座を受講したことから次第に学問の道へ。いまではコロンビア大の心理学科を率いる重責を担う有名な心理学者にまでなったのだ。

 その生涯を自らふりかえりながら、著者が主張するのは「薬物依存」への偏見と薬物犯罪への厳罰化の行き過ぎ。著者は自分の経験から薬物使用者は「ジャンキー」ではないという。厳罰化で投獄や社会的非難が重なるうちに依存に追い込まれてしまう。つまり依存は「つくられる」というのだ。

 著者は薬物を勧めているわけではなく、ほんのわずかな社会環境の違いが、いかにマイノリティーの社会のなかに壁をつくり、社会の分断を生み出すかを自分自身(と周囲)を実例に語る。

「貧困から抜け出せない黒人」への批判に対するていねいで有力な反論にもなっている。(早川書房3000 円+税)

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