トランプ政権誕生の原動力になったアメリカ底辺層のリアル
「ヒルビリー・エレジー」J・D・ヴァンス著、関根光宏ほか訳
「トランプ支持層」がどんな人々なのかがわかるとして日米でベストセラーになった話題の本。
著者は米アパラチア山脈西方のケンタッキー、オハイオ、インディアナ州にまたがるラストベルト(さびて時代遅れになった工業地帯)で育った白人。両親は幼くして離婚し、「ヴァンス」という姓も何人目かの養父のもの。母は薬物依存のうえ、親族のうちで大学進学者はいないも同然という典型的な貧乏白人の出だが、たまたま海兵隊に入隊したことから物事をやりぬく力を得て、学ぶことへの意欲を獲得し、ついに名門イエール大学法科大学院を修了してシリコンバレーで投資会社のCEOにまで上り詰めた。
その生涯をつづりながら「貧乏白人」の社会的孤立を内側から描き出したところが、多くの読者の胸を打ったのだろう。(光文社 1800円+税)