トランプ政権誕生の原動力になったアメリカ底辺層のリアル
「超一極集中社会アメリカの暴走」小林由美著
あまりに極端なアメリカにおける富の偏在。なにしろ上位0・1%の人間たちだけが大半の富を独占し、貧困層はもとより堅実な中産階級が没落の一途をたどっている。それがトランプというトンデモ大統領を誕生させたのだ。
旧長銀で初の女性エコノミストだった著者は退社して米国でMBAを取得。以後、ウォール街で初の日本人女性証券アナリストとなった。つまり富の一極集中の裏側を知り尽くした立場だけに現状の分析もあくまで具体的で明快。グローバル化で工場労働が海外に移転したのが下層中間層の没落を招いたといわれるが、今後はAIの導入で本来の市場に近い米国内に工場が回帰する可能性が高い。だが、それはロボット工場なのでブルーカラーの職は増えないのだ。(新潮社 1500円+税)