超私的「京都本」特集

公開日: 更新日:

「京都の壁」養老孟司著

 鎌倉生まれ・鎌倉育ちの養老センセイが、京都にまつわる偏見をひもとく。一見「京都擁護論」だが、的を射た毒舌と達観が視野狭窄に陥りがちな現代人に気づきを与える。例えば、京ことば。「いけず」や「いちげんさんお断り」は意地悪ではなく、日本人が守ってきた「思いやり」と「非・儲け主義」の表れだという。

「敷居が高く、排他的」という心の壁は京都に限ったことではない。よそにもある。人との距離の取り方が典型的というだけで、京都の壁の実態は「地域共同体の壁」であると看破する。

 また、年中いじっている人工都市・東京の不健全さ、東京大学と京都大学の違い、京都・大阪・東京の三都比較は面白いうえに説得力十分。ノーベル賞や世界遺産認定よりも京都賞(先端技術や基礎科学の国際賞)を礼賛し、地方創生のワナを鋭く指摘。養老節には思わず膝を打つ。京都の和菓子に相好を崩す甘党のセンセイと飼い猫のちょっと可愛いエピソードも染み入る。(PHP研究所850円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭