ツッコミながら笑うMCU映画の最新作
この春学期に教えにいった大学で「アメコミ映画について授業で発表したいです」と申し出た学生がいたのでOKしたら中身はMCUビジネスの話だった。「マーベル・シネマティック・ユニバース」の略。日本マンガの「作家主義」に対してアメコミは「キャラクター主義」で、著作権も絵描きではなく会社に帰属する。
その仕組みを利用し、一本の映画に複数のキャラがどっさり登場して話を盛り上げる。日本の「戦隊ヒーローもの」に似ているが、本来それぞれ独立キャラだから「多国籍軍方式」というべきか。
その最新作が来週末封切りの「スパイダーマン:ホームカミング」である。近年のアメコミ映画はスーパーマンのような陽性のヒーローまでがトラウマだらけの暗い顔なのが特徴だが、この映画はのほほんと平凡な顔つきの15歳が主役。筆者のような世代は「多国籍軍」型映画を見ると「単独ではパワーも収益も弱い二線級ヒーロー」を「枯れ木も山」式に集めたか? などとヒトの悪いことを考えてしまうが、実際にはなかなか巧みに観客を引きつける仕上がり。いやむしろ「ツッコミながら笑う」という今風の娯楽作品として、脱トラウマ時代への変わり目を象徴する存在になっているのではないかと思う。
間々田孝夫著「第三の消費文化論」(ミネルヴァ書房 2800円+税)は現代の消費社会がバブル時代の“見せびらかす消費”を脱し、「自分らしさ」と「エコ」を志向しているとする社会学者の研究。この議論を援用してアメコミ人気を分析すると……などと考えたりもするのである。
<生井英考>