マクドナルド“創業者”の人生流転劇

公開日: 更新日:

 ひところの苦境を脱して業績急回復というマクドナルドだが、その“創業者”の伝記映画が来週末封切りの「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」である。

 いまや世界中で見る一大ファストフードチェーンだが、もともとの「マクドナルド」を経営していたマクドナルド兄弟が飲食業を始めたのは第2次大戦の直前。戦争を経て、いよいよモータリゼーションの本格化する世相の下で一気に開花したのが、ドライブイン方式で行列の客をさばく独自の営業方針だった。映画はその隆盛ぶりに目をつけ、兄弟からフランチャイズの独占契約権をとりつけたレイモンド・クロックの人生を描く。

 注文からわずか15秒でハンバーガーとポテトとコーラを出す調理・接客方式を考え出したのは兄弟だが、クロックは彼らとフランチャイズの独占契約を結び、流れ作業型の調理・接客方式それ自体を商品として、自分の店を持ちたい人々の輪を広げていった。つまりクロック自身は飲食業者というより“起業ビジネス”のモデルを世に売り込み、兄弟からすべての権利を買収した「ファウンダー」(創業者)なのだ。

 映画はその裏面にあったドロドロの暗闘劇を巧妙に、ユーモラスな人生の流転劇として描いていく。クロック自身の半自伝的な自賛本の翻訳もあるが、一番実像に近いのはD・ハルバースタム著「ザ・フィフティーズ1 1950年代アメリカの光と影」(峯村利哉訳 筑摩書房 1200円+税)に収められた「マクドナルド兄弟」の章だろう。買収は1961年。ケネディ大統領就任と同年の、いまは昔の話である。 <生井英考>

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…