「息子が殺人犯になった」スー・クレボルド著、仁木めぐみ訳

公開日: 更新日:

 1999年4月20日、米国コロラド州のコロンバイン高校で、在校生の2人が銃を乱射し、死者13人、負傷者24人の犠牲者を出し、犯人2人は自殺。この事件は米国内のみならず世界中を震撼させた。本書は加害者生徒の一人の母親による手記である。

 事件発生当日、事件の報を聞き、あろうことか自分の息子が加害者であることを知った著者の驚愕と錯乱。事実を受け入れられず、責任を他に転嫁して自分と息子を正当化しようとあがく……。

 前半は、ある日突然、凶悪犯の母親になってしまった著者の狼狽ぶりが赤裸々につづられていく。後半は、各種の精神医学や犯罪学を援用しながら、事件以前の息子の日常を細かく描き、どうすればもっと早く異常に気づけたのかを分析していく。

 教養もあり理解ある両親に育てられた息子が、なぜ事件を引き起こしたのか。この問題にあえて立ち向かうことが贖罪であり、事件再発を防ぐ一助となる。嵐のような憎悪を向けられながらもそう考えるに至った著者のひたむきな姿に心を打たれる。

 (亜紀書房 2300円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  2. 2

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  3. 3

    カブス鈴木誠也が電撃移籍秒読みか…《条件付きで了承するのでは》と関係者

  4. 4

    優勝の祝儀で5000万円も タニマチに頼る“ごっつぁん体質”

  5. 5

    「白鵬米」プロデュースめぐる告発文書を入手!暴行に土下座強要、金銭まで要求の一部始終

  1. 6

    広末涼子“密着番組”を放送したフジテレビの間の悪さ…《怖いものなし》の制作姿勢に厳しい声 

  2. 7

    石橋貴明のセクハラ疑惑は「夕やけニャンニャン」時代からの筋金入り!中居正広氏との「フジ類似事案」

  3. 8

    中居正広氏《ジャニーと似てる》白髪姿で再注目!50代が20代に性加害で結婚匂わせのおぞましさ

  4. 9

    広末涼子とNHK朝ドラの奇妙な符合…高知がテーマ「あんぱん」「らんまん」放送中に騒動勃発の間の悪さ

  5. 10

    元フジ中野美奈子アナがテレビ出演で話題…"中居熱愛"イメージ払拭と政界進出の可能性