読めば納得!? 不倫本特集
「文春にバレない密会の方法」キンマサタカ著
昨今、有名人の流行現象になってしまった「不倫」なるもの。他人事である限りは、魔女狩りよろしく糾弾するのが定番で、いまや日本中の「不倫」がブルドーザーで掘り起こされそうな勢いだ。なにゆえ、人は危ない橋を渡りまくるのか。そこで今回は、男と女がこの世にいる限り到底終わりそうもない「不倫」がテーマの本5冊をご紹介!
芸能人ならずとも、人生に一度や二度は、人には知られたくない密会をするか否かの選択に迫られるときがやってくる。もしあなたが身を滅ぼすことなく、ややこしい関係を安定させたいと願うのなら、この本を手にとろう。
本書は、密会のリスクを提示した上で、社会の目、相手の目、パートナーの目の3点から「密会」がバレない方法を具体的に提示した、超実用本だ。社会的地位も、お金も、家族も失うことなく、いかんともしがたい関係をコントロールするノウハウが詰まっている。
たとえば、待ち合わせするなら市役所の駐車場、車に乗せるなら後部座席、相手の電話登録名は保険営業、カーナビは使うな、スマホのカバーは着信が見えない手帳型を選べ、密会の後は喫茶「ルノアール」で匂いを消せなど、かゆいところに手が届きすぎの情報が満載。不倫推奨本ではないとは著者の弁だが、ここまで実用的だと試してみたくなる人が続出するかも。
(太田出版 1111円+税)
「損する結婚 儲かる離婚」藤沢数希著
愛だの恋だのという視点を切り捨てて、金融商品として結婚という制度を見直したとき、結婚とは所得連動型の債券と同じらしい。
民法の規定では、夫婦は相手の生活を自分と同じレベルで維持し、夫婦の資産、収入その他一切の事情を考慮して婚姻から生ずる費用を分担する義務があるとされており、夫婦で稼いでいる方がそうでない方に一定額支払う義務が生じる。
結婚がうまくいっているときは問題がないのだが、いったん離婚騒動となるとこの義務が経済力がある方に牙をむく。たとえば、年収700万円のサラリーマンで、15歳以上の子供がふたりいて妻が専業主婦という場合、離婚が成立するまでの間、妻に対して月々14万~16万円もの支払いをする羽目に陥る。
本書では芸能人や実業家の例もケーススタディーとして提示。創業前に結婚して成功した起業家が離婚する際には、持ち株の半分が妻に行くことにもなりかねずハゲタカファンド以上のダメージを食らうなど、愛もすっかり冷めそうな現実を教えてくれるので、心あたりのある方は覚悟して読むべし。
(新潮社 740円+税)
「初恋と不倫」坂元裕二著
昔中学校が一緒だった女友達・三崎明希から、ある日届いた一通の手紙。結婚することが決まり、招待状を送りたいという内容だった。最初、なつかしく読み始めた玉埜広志は、この手紙が高速バスの車中で書いてサービスエリアから投函されたもので、明希の乗っていたバスは先日死者も出るほどの大事故を起こしたバスだったことに気づく。
明希が事故に遭ったのでは、と慌ててメールアドレスを記した手紙を送った広志。事故を起こしたバスの運転手こそが明希の婚約者で、しかも事故後に逃走中という状況の中、明希からの能天気なメールの返事を受け取るのだが……。
本書は、「東京ラブストーリー」「カルテット」などの脚本家である著者が、2012年から2014年にかけて行った2つの舞台「不帰の初恋、海老名SA」と「カラシニコフ不倫海峡」のせりふのみを小説として再現したもの。男女のせりふだけで、ふたりの心情の移り変わりや相手を思う気持ちが切なく伝わってくる。
(リトルモア 1600円+税)
「人はなぜ不倫をするのか」亀山早苗著
今までの人生で築いてきたものを失いかねない不倫という行為に、なぜ人は走るのか。そんな疑問を「ジェンダー研究」「昆虫学」「動物行動学」「宗教学」「心理学」「性科学」「行動遺伝学」「脳科学」という8分野の専門家にぶつけ、不倫をやめない人間の生態に迫ろうとしているのがこの本。
たとえば、上野千鶴子は「不倫の前段階として、人はなぜ結婚という守れない約束をするのかの方がもっと不思議」と語り、結婚が相手のセックスの管理権と化していることに疑問を呈する。また産婦人科医の宋美玄は「性欲景気連動説」を唱え、いまの不倫市場の主役がバブル経験者である40~50代である一方で、経済的不安を抱え草食化した今の若者が中年になったときに不倫欲求があるかどうか疑問だと話す。
着目すべきは、どの学者も不倫を全く否定していない点。不倫を否定する制度や習慣の方が、生物としての人間の生態に合っていない可能性をそろって示唆している。
(SBクリエイティブ 800円+税)
「不倫」パウロ・コエーリョ著、木下眞穂訳
主人公・リンダは、スイスのジュネーブに住む30代のジャーナリスト。妻思いの資産家の夫とふたりの子供に恵まれ、仕事場でも将来を嘱望されている絵にかいたような幸せの中にいるのだが、ある取材で聞いた「幸福な人生より情熱的な人生を選ぶ」という言葉をきっかけに、自分の人生が空虚であることに気づいてしまう。
そんなリンダの前に現れたのが、10代のときに付き合っていた元恋人のヤコブ。政治家として順風満帆な彼の中にも自分と同じものがあるように感じ、ヤコブとの関係に足を踏み入れていく――。
「星の巡礼」「アルケミスト」「ベロニカは死ぬことにした」など、精神世界を描くことが多かった著者による世俗的な不倫をテーマにした小説とあって話題を呼んだ。しかし読み進めるうちに、空虚感にさいなまれるリンダが苦しんだ末に出合ったものが「不倫」であり、この本がひとりの女性の精神的な旅の行方を描いたものであることが見えてくる。
(KADOKAWA 1800円+税)