中年バンドマンに降りかかる不可解な事件
「ヘビメタ中年!」荒木源著 小学館文庫610円+税
同じ著者の「オケ老人!」は高齢者ばかりのアマチュア・オーケストラが主人公だったが、本書はタイトル通り、中年男たちによるヘビメタ・バンドが主人公。ヘビメタが音楽シーンに登場してからすでに40年以上経っているし、1980年代にヘビメタの洗礼を受けた若者たちも、今や立派な中年になっているのは理の当然。そんなかつてのヘビメタ少年たちの30余年後の物語。
【あらすじ】舞台は「オケ老人!」と同じ梅が丘町。高校時代に結成したヘビメタ・バンド「ブラッククロー」の4人のメンバーも、今年みな53歳を迎える。
ボーカルの江波は梅が丘市民病院の消化器外科科長という肩書を持つドクター。ギターの岩崎はカーディーラーの店長。ベースの吉川は家業の魚屋を継いでおり、ドラムの久米は文具メーカーで経理一筋と、みな音楽とは無関係な仕事で生計を立てている。それでもヘビメタへの愛はやみがたく、バンドを再結成して週に1度の練習を行い、何カ月かおきにライブハウスのステージに立っている。
そんなメンバーに不可解な事件が続く。江波はヘビメタをやっていることが患者にバレ、手術を拒否される。岩崎は長年秘密にしていたカツラのことがバレてしまう。吉川は予定していた「さかな祭り」を潰されそうになり、久米は隠していた要介護の母親の存在を恋人に知られる。一見ばらばらに思えたこれらの事件だが、どうも同じ人間による嫌がらせではないかという疑惑が持ち上がる……。
【読みどころ】思えば、今年来日したポール・マッカートニーをはじめ、ストーンズのミック・ジャガー、キース・リチャードもみな70代で現役バリバリ。本書の主人公たちもあと20年は頑張ってヘビメタを続けてもらいたい。
<石>