中年女性4人がロックバンド結成
「1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター」五十嵐貴久著 双葉文庫 648円+税
阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件が起きた「1995年」と、イギリスのロックバンド、ディープ・パープルの名曲「スモーク・オン・ザ・ウォーター」。この一見なんの関係もない2つが結びついて生み出された、音楽素人の中年女性たちがロックバンドを結成するという痛快な物語。
【あらすじ】1995年4月。44歳の主婦、美恵子は大震災やサリン事件にも匹敵するような問題を抱えていた。息子の真人が高校受験に失敗し、中学浪人になってしまったのだ。
そんな折、幼馴染みのかおりから40万円の借金を申し込まれる。この程度ならどうにかなるのだが、腫れ物に触るような感じで息子と家にいるのに気詰まりを覚えていた美恵子は、これを機に近所のコンビニでパートを始める。
そこで出会ったのが万引常習者の雪見。ひょんなことから美恵子、かおり、雪見の3人でバンドを組んで「スモーク・オン・ザ・ウォーター」を演奏しようということになった。美恵子はボーカルとギター、かおりはキーボード、雪見がドラム。ピアノの経験があるかおりを除き、どちらも全くの初心者。しかもベースがいなければバンドにならない。ベースメンバーを公募してやってきたのがプロのベーシスト、新子だ。新子に手取り足取りしてもらいながら練習しているところに、市内の高校のチャリティーコンサートに出演するチャンスが巡ってくる。しかし、その高校は真人の志望する高校だった……。
【読みどころ】さまざまなしがらみを振り捨てた中年女性4人が、聴衆を前に「スモーク・オン・ザ・ウォーター」を演奏するのは、なんともカッコいい。あの有名なギターリフ、〈ジャッジャッジャー ジャッジャッジャーン……〉が心地よく響いてくる。
<石>