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「広告業界という無法地帯へ」前田将多著

■高橋まつりさんの自殺事件を機に“ブラック業界”の代表格になった広告代理店。いま何が起こっているのか。

 米国の大学を卒業し、電通勤務14年。まつりさんとは入れ替わりに退社した身ながら、今回の事件で内部を知る者として筆を執らずにはおられなかったという。事情も知らずに電通をブラック企業呼ばわりされると腹が立つ一方、電通は「どんな無理でも聞いてくれる」とクライアントに思われていることが情けない。そんな気持ちから書かれたのが本書だが、暴露本というより業界人の自嘲と自虐ネタを、いまは外部になった立場から軽妙につづったものといったほうがいい。

 CGで簡単にデモ映像のできる時代になって、むしろクライアントの注文はどうでもいい細部に集中しがちになった。「3日後までに1000万円」の口約束で始まった企画の趣旨がコロコロ変わり、そのたびに現場は段取りを一からやり直すのに「クライアントは神様」主義が改まらない。そんな日本社会の遺風も描かれる。著者は大阪支社に配属されてすぐの新入社員時代、夜の打ち合わせを先輩に打診され、「これからデートがありまして」と断った。すると先輩は「そっか、ほなそっち行け。おまえは仕事覚えるよりもまず、大阪を好きになれ」。自殺に追い込まれたまつりさんの不幸は「こういう先輩に恵まれなかったことではないだろうか」と著者は言う。 (毎日新聞出版 1300円+税)

「電通事件」北健一著

「なぜ死ぬまで働かなければならないのか」と副題にズバリ。土日出勤、朝5時帰宅が当たり前という日常を強いられていた高橋まつりさん。対する電通は「体育会で滅私奉公を求める社風」。東大卒の優秀なまつりさんだが、パワハラの社風に加え、徹夜続きで青い顔をしていると「女子力がない」とセクハラまでのしかかっていたのだ。

 メディアの世界に隠然たる支配力をふるう電通だが、ほかにも日本郵便などブラック会社は後を絶たない。金融ビジネス取材などの多いジャーナリストの著者は日本企業の「自主残業体質」にまで迫っている。

 (旬報社 1000円+税)

「急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。」小霜和也著

 博報堂でコピーライターを36年。その後独立した著者はデジタル化の黎明期に遭遇し、テレビなどの「マス広告」とwebの「デジタル広告」の両方を手掛ける数少ないクリエーターになった。米国では既にweb広告がテレビをしのぎ、日本でも早晩同じになるとされる。ではどうすればいいのか。本書はweb上の動画広告を制作するためのヒントとアイデアを紹介。ひところ家電量販店の店頭でよく見た新型PCのオモシロ動画も、著者が制作したweb専用動画だったそうだ。

(宣伝会議 1800円+税)

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