「大きくなる日」佐川光晴著
明日は太二が1歳の時から通った山花保育園の卒園式。今日は、いつも仕事で忙しいお父さんがお迎えに来てくれた。家族4人そろっての夕ご飯も久しぶりだ。お父さんは、ぼくが「タイちゃん」と赤ちゃんぽく呼ばれるのが嫌で、その時、大好きだった「都営地下鉄三田線くん」と呼んでくれと言った3歳の時の思い出話をまた始めた。お父さんは、その時に星野先生だけがきちんと「三田線くん」と呼んでくれたことを今でも感心している。ビールを飲んでご機嫌なお父さんに小学校4年のおねえちゃんは、明日はテニススクールがあるから卒園式には行かないと言い出す。(「ぼくのなまえ」)
太二が中学3年生になるまでと、その友人たちの成長を描く、心に染みる家族小説集。
(集英社 580円+税)