「オリンピックがやってきた」堀川アサコ著
西洋館に住んでいる〈奥様〉は亡命ロシア人だと信じられている。タロットカードが得意なので「お屋敷の魔女」と呼ばれ、みんながなくし物の相談などにくる。前田ツナがお腹が痛いという孫娘を連れてきた時は虫垂炎だと見抜いて医者に行かせた。その晩、ツナと嫁は孫娘を初めから医者に連れていかなかったことで口論に。ツナは戦死した息子の形見を入れた手箱を嫁が捨てたと罵る。ある日、奥様の所へ坊主頭の青年がやってきて、実家に手紙を出そうとするとポストも郵便局も消えてしまうという。奥様が預かって前田家に持っていくと、それは戦死した息子の手紙だった。(「第1話」)
東京五輪開催前の時代を描く6編の短編集。
(KADOKAWA 1500円+税)