「アナログ」ビートたけし著
設計会社・清水デザイン研究所に勤める水島悟はある日、自分の会社がデザインを手がけた広尾の「ピアノ」という喫茶店で、みゆきという女性に出会った。どこか心引かれるものを感じた悟は、彼女が木曜日にこの店に通ってくると聞き、毎週木曜日に「ピアノ」に通おうと思い始める。年を取ってすっかり体が弱くなった母を預けている施設に通う以外、今までは特に予定もなかった悟だったが、お互いの携帯番号もメールアドレスも交換しないまま都合が合えば週に一度ここで会いましょうという約束を彼女と取り交わせたことに喜びを覚える。
それから徹夜続きの仕事や突然の出張の予定などをクリアして彼女に何度か会った悟は、ついに結婚を決意する。ところが、指輪を購入してプロポーズをしようと思ったその運命の木曜日、彼女はなぜか姿を現さなかった……。
又吉直樹の芥川賞受賞に触発されて書いたという、著者初めての恋愛小説。スマホやITが全盛の時代、そうした風潮を好まないアナログの世界に生きるひとりの男を主人公に、女に本気で恋をした男の切ないラブストーリーを描いている。
(新潮社 1200円+税)