「藪医 ふらここ堂」朝井まかて著
おゆんは、父で小児医の三哲の医院で、患者に待ち札を渡したり、処方した薬の名を覚帳につけたりしている。三哲は人一倍の怠け者で、子供以上に手がかかる。界隈では、医院の前庭にあるふらここ(ブランコ)にちなんで「藪のふらここ堂」などと陰で呼ばれるほどだ。三哲は、患者がどれほど待っていようが、構わず診療部屋で世間話に花を咲かせており、おゆんは患者の視線がつらい。宝暦9(1759)年の正月、おゆんが三哲と取上婆(産婆)のお亀と祝い酒を飲んでいると、大店の手代が往診を頼みにきた。店の跡取り息子が高熱を出したが、かかりつけ医が留守で、三哲の医院にたどり着いたらしい。三哲はいやいや迎えの駕籠に乗るが……。
ふらここ堂の人々の日常を描く人情時代連作集。
(講談社 780円+税)