「宿命の戦記」髙山文彦著

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 日本財団会長の笹川陽平は、1974年、笹川記念保健協力財団を設立。ハンセン病根絶を目標に掲げ、WHOに対して資金提供を始める。以後、40年間で202億円を拠出、同時にハンセン病の特効薬MDTの無料配布を実施するなどハンセン病の制圧活動に大きく貢献した。著者は笹川の制圧活動の旅に密着し、7年間に20カ国近く訪れた。本書はその記録である。

 インド、マラウイ、ブラジル、ウクライナ、キリバス……、世界を駆け巡る笹川は各地で強調する――ハンセン病は完治する病であり、間違った知識や偏見・差別をなくさなければならない。治療と差別の撤廃、これがハンセン病制圧の車の両輪であると。

 70歳を越えた笹川は過酷な旅をものともせず、各地のハンセン病施設を訪ね、患者たちに触れ合っていく。

 同行者である著者もまた、ハンセン病で早世した作家・北條民雄の評伝を書いて以来、この病に関心を抱いてきた。その2人の思いが合わさり、ハンセン病の現状を強く訴えかけてくる。(小学館 1900円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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