「温泉天国」杉田淳子著、武藤正人編

公開日: 更新日:

 温泉旅館にこもって原稿を書くという定番の作家像があるせいなのか、作家が温泉について書いたエッセーは数多い。大人の楽しみを伝える「ごきげん文藝」第1弾の本書は、数々の作家がつづった、温泉エッセーを集めたエッセーアンソロジーだ。ページをめくれば、有名どころから、知る人ぞ知る秘境の湯まで、意外な作家が漬かった湯を追体験できるので、本書をガイドに温泉巡りをしたくなりそうだ。

 脱獄囚が泊まり込みにくるという、いわくつきの温泉の思い出をつづった吉川英治の「ぬる川の宿」や、混浴の温泉で偶然一緒になった少女の裸体に目がくぎづけになったエピソードを描いた太宰治の「美少女」、死者をも蘇らせる霊力のある湯を求めて和歌山の湯ノ峯温泉を訪ねる荒俣宏の「濃き闇の空間に湧く『再生の湯』」、地熱発電も盛んなアイスランドの温泉体験をつづった村上春樹の「温泉だらけ」など32編。

 名作を編み出した作家たちの創作の源泉が見えてくる。(河出書房新社 1600円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭