「赤猫」柴田哲孝著
赤猫とは警察用語で放火、あるいは放火犯のことを指す。
警視庁石神井署の刑事片倉康孝は定年間際で、今は捜査の現場から離れている。“乗り鉄”でもあった彼は今、上越線小出駅のホームに立っている。3日の休暇を取り、これから只見線に乗って会津若松に向かうところだ。
片倉には忘れられない事件があった。20年前に起きた放火殺人事件のことだ。事件現場に貼ってあった一枚の守札「須門神社」がこの沿線にあるのだ。そこで住安武治という老人の知己を得る。署に戻った片倉は、かつての部下柳井、鑑識の得丸らを巻き込んで20年前の赤猫の再捜査に着手した。
捜査は難航を極めるがおぼろげながら見えてきたのは、昭和30、40年代を生き抜いた女たちの凄まじい情念、生きざまだった。20年前の放火事件の謎を追う警察小説。
(光文社 1600円+税)