「クズリ」柴田哲孝著
東京と横浜で、プロの犯行を思わせる射殺事件が発生した。警視庁外事情報部の中瀬警視は、被害者のどちらもが麻薬取引に関与していること、銃の線条痕が30年以上前に姿を消した伝説の暗殺者・クズリのものと一致していることを突き止める。獰猛なイタチ科の動物であるクズリの名で呼ばれるその暗殺者については、誰も本名も国籍も知らず、写真さえ残されていない。中瀬はクズリの過去を探り始めた。
一方、その頃、中国広東省の宝安国際空港から韓国に覚醒剤を密輸しようとした男が仁川空港で摘発され、3カ月の間に主犯格6人が逮捕される。しかし供給担当の男1人が逃亡。その後、日本に入国した形跡があり、さらにその男を追って香港の殺し屋も日本へとやってきた。
殺すか殺されるかの世界にうごめく男たちの暗闘の行方はいかに……。
「下山事件 最後の証言」で名を上げた著者の最新作。血なまぐさい世界に生きる男の命のやりとりをスリリングに描いている。(講談社 1800円+税)