「怖い女」沖田瑞穂著
「女神」といえば、ボッティチェリの「ビーナスの誕生」に描かれている美や愛や豊穣を象徴する良き女性像を想像することが多い。
しかし、女神にはそうした好ましいイメージとは真逆の、生きている者を呪い、生み出したはずの人の命を奪うダークな側面が存在している。本書は、世界中に伝わる神話や現代の都市伝説やホラーなどに現れる女神的存在を掘り起こし、古代から現代まで続く女たちの恐るべき側面に光を当てる。
たとえば、刃物を持った口裂け女に子どもたちが追いかけられる都市伝説は、実は古事記のイザナミの神話に類似していると著者は指摘する。
死んでしまった美しい妻・イザナミを求めて黄泉の国に足を踏み入れた夫・イザナギが、醜く変わり果てた妻を見て逃げ出すが、妻に追いかけられ、死の呪いをかけられるからだ。
こうした女神の負の側面の事例を国内外の伝説や小説、漫画などから幅広く収集。
女の怖さの源泉を知ることができる。
(原書房 2300円+税)