万物の起源を解説「現代版・創世神話集」
「起源図鑑」グレアム・ロートン著 ジェニファー・ダニエル/イラスト 佐藤やえ訳
すべての物事には始まりがある。科学や哲学、文学など、人が積み重ねてきた研究や思索は、すべて「私たちはどこから来たのか」という永遠ともいえるテーマへの挑戦ともいえる。本書は、宇宙の始まりから偶然の産物という電子レンジまで、万物の起源を解説した現代版「創世神話」集。
今から約138億年前に起きた現象によって、何もない無の状態から、物質やエネルギー、時間や空間が自然発生的に生まれた。宇宙の起源がこの「ビッグバン」ということは今や常識。だが、実は宇宙が生まれた、その瞬間については、現実世界の理論ではいまだに説明することができず、ほとんど推測の域を出ていないという。その悩ましい問いに答える最新の研究の成果も取り上げる。
以後、月や大気など順を追ってこの世界の一つ一つの起源を解説。
多くの男性諸氏を悩ませ、かつ喜ばせるセックスの起源についても記されている。生命が誕生してから20億年間、セックスは地球に存在しなかった。
教科書的答えでは、セックス=有性生殖の役割は、多様性を生み出し、進化の源と定義されている。しかし、その始まりも役割もまだよく分かっていないのだとか。なぜなら、有性生殖は効率が悪く、個体をそのまま複製する無性生殖の方がはるかに合理的だからだ。そこで、有性生殖の登場を必然にし、今も有利であり続ける理由を、ミトコンドリアの存在で証明する新説を紹介する。
その他、今は7000種もあるという言語の始まりや、私たちはいつから「お酒を飲むようになったのか」「死者を埋葬するようになったのか」など身近な疑問まで、全53項目を面白エピソードを交えながら解説。
これまで蓄えた知識が、今やかなり古いことを痛感させられる面白本だ。(ディスカヴァー・トゥエンティワン 2800円+税)