“習王朝”の中国
「核心の中国」朝日新聞中国総局
2012年11月、中国共産党は党大会で正式に習体制を発足させた。
12年11月の党大会の直後に習は「反腐敗」キャンペーンを開始。胡錦濤時代の大物を次々と摘発。4年間で党中枢から中央官庁、地方政府まで計200人以上の高官を失脚させた。しかも一度摘発に入ったところに再度三度とメスを入れ、「常に震え上がらせる」方針を貫徹。そして16年秋、党内会議で習近平は「党中央の核心」と位置づけられた。本書はそこから約1年間の中国に密着取材した連載記事の単行本化。
党内の政治力学から有名無名の側近たちの素顔、そして「核心」へと上り詰めていくまでの党内政治闘争をたどる。熾烈な駆け引きを制し、総書記就任からわずか5年で党規約に「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」という文言を書き込むのに成功。これで習は毛沢東、鄧小平に並ぶ存在にのし上がったのだ。
習の“兄貴分”として反腐敗キャンペーンを展開した王岐山を逆に汚職で告発した実業家・郭文貴へのインタビューも収録し、反習近平の動きも押さえている。 (朝日新聞出版 1400円+税)
「習近平は毛沢東になれるのか」室井秀太郎著
日経新聞で上海特派員も務めた著者は、日本のマスコミの中国報道は左右どちらかの極端に偏りがちという。不動産バブルだけ見て「中国経済減速」を報じ、権力闘争といえば「共青団VS太子党」の図式ばかり。
著者によれば、習は剛腕だが政策に独創性がない。また中国の若手エリートは「中国には民主主義は不要」と考えているという。天安門事件当時の民主化機運は完全にしぼんだようだ。
では習は「毛沢東になれるのか」。党大会を見る限り、今の習は毛沢東以上の独裁者。ただし、その先行きはまだ見えないという。 (原書房 1500円+税)
「習近平王朝の危険な野望」福島香織著
産経新聞記者からフリーに転身した著者は、習がかつてない強権を手にした昨年秋の共産党大会を、習の「勝利宣言とはいえない」とみる。むしろ「習近平王朝は共産党体制最後の王朝になるのではないか」という。
いまは廃止されている「党主席」制度を復活させたい習だが、仮に成功しても軍の忠誠と信頼を得られるかは別。
習は軍制改革で多くの軍人をリストラしたが、退役後の福利に不満を持つ退役組による大規模ストが頻発し、習を悩ませている。
これを払拭する効果的な手段は「戦争」だ。つまり、習体制下では権力維持のための「手ごろな戦争」が起こる可能性が高いという。台湾進攻などはその一例としている。 (さくら舎 1500円+税)