「島のエアライン(上)」黒木亮著
イルカの親子が描かれた機体で有名な天草エアラインは、熊本県天草を拠点とする第三セクター方式の航空会社。
本書は同社を主役としたノンフィクションノベル。
本土との交通のアクセスが悪い天草に飛行場をとの訴えが県議会に出されたのは1973年。その後、運輸省(当時)の認可を受け空港建設に着手するが、観光の目玉となるはずの西武グループのリゾート開発が白紙となり、土地買収は難航、就航する航空会社も決まらない。開港が危ぶまれる中、県庁は自前で航空会社をつくることを決定。
とはいえ、飛行機の購入、パイロットや整備士、CAなどを独自に調達・育成しなければならず、わずか1機の就航で採算を確保するのは至難。幾多の困難を乗り越え、ようやく2000年3月、開港にこぎ着ける。
その後もトラブルが続くが、初年度はなんとか黒字を出すことができた――。
ここまでが上巻。航空業界の素人集団が次々と襲ってくる困難に立ち向かっていく姿は、ジェットコースターサスペンスさながら。下巻もさらなる難問が続出!
(毎日新聞出版 1500円+税)