「未来」湊かなえ著

公開日: 更新日:

 佐伯章子は成績が良く自立した考えを持つ小学4年生。やさしくて思いやりのあるパパと美人だけど時々心をなくして人形になってしまうママとの3人暮らし

 ところが、4年生の最後の春、大好きなパパが死ぬ。

 そんな折、自宅のマンションのポストに一通の手紙が入っていた。驚いたことに差出人は20年後の自分だった。誰かのいたずらかと思ったが、自分しか知らない出来事が書かれ、今年10周年を迎えた東京ドリームマウンテンの30周年記念のしおりが同封されていた。以後、章子は未来の自分宛てに手紙を書き始める。学内でのいじめ、ママの病気、祖母から聞かされた両親の結婚の秘密等々、つらいことがふりかかってくるが、章子はけなげに対処していく。

 おや? いつもの湊かなえらしくない明るい話だなと首をかしげるかもしれない。ご安心あれ。ある事件をきっかけに、章子はけなげさなど全く通用しない奈落の底へ突き落とされるのだ。

 終盤は、明と暗、善と悪とが反転し、一気に湊かなえワールドが展開されていく。二人称小説という難題に挑んだ野心作。

(双葉社 1680円+税)


【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇