「星の文学館」和田博文編
映子は、たまに部屋から歩いて3分の場所に借りた駐車場の車の後部座席で一夜を過ごす。車で寝ると懐かしい記憶が呼び起こされるからだ。8歳の冬、車の後部座席で寝ていた映子が目を覚ますと、知らない間に車は走り出し、運転席には見知らぬ男がいた。文蔵と名乗った男は、映子が乗っていたことに驚くが、車は既に高速道路を走っており、降ろすこともできない。おとなしくしていれば危害を加えないという文蔵を信じた映子は、目的地が近づいたサービスエリアで文蔵と一緒に星を眺める。(三浦しをん著「冬の一等星」)
ほかに、ハレー彗星と地球との衝突の噂に揺れる日々を描いた内田百聞のエッセーなど、天体をめぐる文学作品を編んだアンソロジー。
(筑摩書房 820円+税)