「ビッグヒストリー大図鑑」デイヴィッド・クリスチャンほか監修
宇宙誕生から現在まで、138億年の歴史をたどる壮大な歴史図鑑。誕生直後の単純な構造をした宇宙から、恒星の出現などを経て、生命体が存続できる地球のような天体を含む秩序ある宇宙にいたる過程で起きた8つの「大変革」を、学問の垣根を越えて、さまざまな視点から解説する。
先人たちは、世界がどのように誕生したのかという疑問に答えるべく、数多くの創造神話を育んできた。
たとえばドイツで出土した、青銅器時代の3600年前に作られた「ネブラディスク」。製作者が夏至と冬至の日の出地点と日没地点間の角度を測定していたことが分かり、当時の人々が天体観測を行い、天文学の知識を深め、実用していたことを裏付ける。
宇宙に関する疑問を解明していった人類は、我々が暮らす銀河系の他にも銀河があり、さらに宇宙が膨張していることを知る。宇宙が膨張しているならば、時間をさかのぼるほど、宇宙の密度が高くなり、やがて密度が無限大の一点になる――と考えたベルギーの天文学者、ジョルジュ・ルメートルが1931年、宇宙は最初は1個の超高密度の粒子であり、それが爆発して空間と時間が生まれ、宇宙が膨張し始めたと提唱。これが後に「ビッグバン」と名付けられた仮説で、現在ではほとんどの天文学者に受け入れられている。
ビッグバンに続く、第2の「大変革」は「星の誕生」だ。初期の宇宙は、水素とヘリウム、そして暗黒物質という別の形態の物質から構成されていた。水素とヘリウムが出現したとき、宇宙はまだ1秒も経っておらず、物質のわずかな密度差に、重力が作用して核融合が起こり、これが最初の恒星や銀河の形成につながっていく。最初の恒星の誕生はビッグバンから2億年後だという。
そして燃料を使い果たした恒星は、崩壊時に化学工場の役目を果たし、生物を含むあらゆる存在の材料となる新たな元素を作り出した。これが第3の大変革「元素の生成」だ。
以後「惑星の形成」「生命の出現」「進化する人類」「文明の発達」「近代産業の勃興」とターニングポイントを多くの図版や解説でたどっていく。
人類がホモサピエンスに進化したのはわずか20万年前のことで、この長大な歴史からみるとごく最近の出来事だ。その短い間に人類は、コミュニケーション能力と、前の世代が得た知識の上に知識を積み重ねる「コレクティブ・ラーニング」の能力を備えることによって、現在の地位を得ることができた。
人類のこの知の集積がなければ、宇宙はただ存在するだけで、その歴史も仕組みも解かれることはなかった。その意味で、本書は人類が到達した今の時点での創造神話ともいえる。
断片的だった知識が、本書を読むことでつながる。一方で、最新の知見も網羅され、知的興奮をもたらしてくれる読書体験となるに違いない。
(河出書房新社 8800円+税)