「ノースライト」横山秀夫著

公開日: 更新日:

 大手設計事務所で腕を振るっていた1級建築士の青瀬稔はバブル崩壊で職を失い、妻とも離婚。そんな青瀬を救ってくれたのが大学の同期の岡嶋。岡嶋の設計事務所で働き始めてしばらく後、吉野という施主が青瀬に「あなた自身が住みたい家を建ててください」と言ってきた。

 そこで出来上がったのが信濃追分のY邸だ。北からの光を採光の主役に抜擢した斬新な木の家は建築雑誌にも取り上げられ、一躍青瀬の名を高めた。

 ところが、Y邸には人が住んでいないという噂が耳に入る。

 確かめに出掛けると、人が住んだ気配はなく、応接間に古めかしい椅子がポツンと置かれていた。

 その椅子は、桂離宮など日本の美を再発見したドイツの建築家、タウトがデザインしたものらしい。なぜそこにタウトの椅子があるのか。そして施主の吉野一家はどこへ消えたのか。

 一方、文化施設のコンペで所長の岡嶋がスキャンダルに巻き込まれてしまう……。

 警察や新聞社を舞台にしたミステリーで定評のある著者だが、今回の主役は建築。著者の新境地を告げる力作長編。 (新潮社 1800円+税)

【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…