「続 横道世之介」吉田修一著

公開日: 更新日:

 2010年に柴田錬三郎賞を受賞し、その後映画化もされベストセラーとなった前作「横道世之介」の続編。

 本作では、大学はどうにか卒業したものの、バブル最後の売り手市場に乗り遅れてバイトとパチンコで食いつないでいる24歳になった横道世之介が登場する。

 物語は、朝から気合を入れて狙っていたパチンコの新台争いに敗れたものの、素人が打っていた台で大当たりを出した世之介が、今夜の晩酌相手に選んだ友人のコモロンこと小諸大輔に電話をするところから始まる。その夜ふたりで入った居酒屋には、新台争いした眉の細い女・浜本が働いており、しかも行きつけの理髪店でもバッタリ遭遇して、浜本が角刈りにしようとしていることを知った。角刈りにするのに立ち会ってほしいといわれ、わけもわからないまま浜本が角刈りになるのを見守る羽目になるのだが……。

 人間のあるがままの姿を受け入れて生きている世之介が、仕事が合わずに悩む同級生や、寿司職人を志す女や、元ヤンのシングルマザーや、不法滞在の中国人など、出会う人々それぞれに小さな幸せをもたらす。心温まる青春小説だ。

(中央公論新社 1600円+税)



【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇