「続 横道世之介」吉田修一著
2010年に柴田錬三郎賞を受賞し、その後映画化もされベストセラーとなった前作「横道世之介」の続編。
本作では、大学はどうにか卒業したものの、バブル最後の売り手市場に乗り遅れてバイトとパチンコで食いつないでいる24歳になった横道世之介が登場する。
物語は、朝から気合を入れて狙っていたパチンコの新台争いに敗れたものの、素人が打っていた台で大当たりを出した世之介が、今夜の晩酌相手に選んだ友人のコモロンこと小諸大輔に電話をするところから始まる。その夜ふたりで入った居酒屋には、新台争いした眉の細い女・浜本が働いており、しかも行きつけの理髪店でもバッタリ遭遇して、浜本が角刈りにしようとしていることを知った。角刈りにするのに立ち会ってほしいといわれ、わけもわからないまま浜本が角刈りになるのを見守る羽目になるのだが……。
人間のあるがままの姿を受け入れて生きている世之介が、仕事が合わずに悩む同級生や、寿司職人を志す女や、元ヤンのシングルマザーや、不法滞在の中国人など、出会う人々それぞれに小さな幸せをもたらす。心温まる青春小説だ。
(中央公論新社 1600円+税)