幻想と幻滅のオリンピック
「オリンピックVS便乗商法」友利昴著
いまからだってやめたほうがいいんじゃね? と誰もが思う幻滅の五輪批判。
いまや利権と商業主義まみれが歴然たるオリンピック。その実態を鋭く暴く。IOC(国際オリンピック委員会)やJOC(日本オリンピック委員会)など各国の関連団体が血眼で摘発するのが「アンブッシュ・マーケティング」だ。スポンサー企業が選手の五輪選出を祝う投稿をSNSに上げただけで法廷闘争になったという。
ブランドなど知的財産権の専門家である著者は海外の事例を多数紹介し、2020年東京五輪に臨むJOCとニッポン社会の対応を精査する。我が国の特徴は報道機関から広告代理店各社までが「まるで示し合わせたかのように」「適法なオリンピック資産の利用行為まで、あたかも権利侵害、違法であるかのよう」に扱ってきたという。
またJARO(日本広告審査機構)の方針も詳しく検討し、いつのまにか解釈が変更されたことも明らかにしている。ちなみに著者の肩書は「1級知的財産管理技能士(コンテンツ/ブランド専門業務)」。 (作品社 2400円+税)
「ヤクザと東京五輪2020」宮崎学、竹垣悟著
五輪といえば公共事業。その裏にあるのはいつの時代も利権の暗躍、そして非合法の面々が権力の手先となって体を張る図だ。
本書はご存じヤクザの息子にして元ゲバルト学生と、4代目山口組組長に最初に仕えた元組織暴力団組長が対談で明らかにする“五輪裏話”。64年五輪の際は高度成長期ゆえ大手ゼネコンが元請けになり、1次下請け、2次……とつながり、ヤクザ集団にもうまみがあった。しかし2020五輪は暴対法ゆえに本来なら適法な関与すらできない。「まっとうな」ヤクザを厳しく取り締まるばかりで半グレは事実上放置という現状に強く苦言を呈する。 (徳間書店 1500円+税)
「日本初のオリンピック代表選手 三島弥彦」尚友倶楽部、内藤一成、長谷川怜編
大河ドラマ「いだてん」の主役でマラソン選手だった金栗四三とともに、初の日本人五輪代表になったのが短距離の三島弥彦。熊本の田舎の素封家の息子だった金栗に対して三島は明治の鬼警視総監として知られた三島通庸の五男で、学習院から東京帝大に進んだエリート中のエリート。体格も父に似て六尺豊かな大男、スポーツ万能の偉丈夫として世間に知られたという。
本書は旧貴族院の議員会派で結成された社団法人「尚友倶楽部」の関係者らによって編まれた弥彦伝。ストックホルム五輪で金栗は日射病に倒れたが、国内では敵なしの弥彦も惨敗に終わり、「私たちのやっているのはカケッコで、外国選手のやっているのはレース」とのちに回想したという。 (芙蓉書房出版 2500円+税)