不動産お荷物時代
「負動産時代」朝日新聞取材班著
バブルが去って、はや30年。人口減少のニッポンでは、いまや不動産が“お荷物”になりつつある。
新聞はときにうまい造語を送り出す。今回の「負動産」もその一例。社会面の連載で取材班が取り上げたのは全国各地の老朽マンションや戸建て。本書が「負動産」と呼ぶのは管理費や修繕積立金が足かせとなって「塩漬け」になってしまう物件だ。
所有者が死亡して相続放棄されると、管理費などが滞納のまま積み上がって、管理組合が相続財産管理人の選任を申し立てても売るに売れない状態になったりする。バブル期に建ったリゾートマンションでも、滞納に耐えかねた管理組合が競売にかけた物件が宗教法人を名乗る半グレ集団に落札され、管理費を不払いのまま共用の温泉に禁止のはずの入れ墨の男たちが堂々と出入りするようになったケースさえあるという。半グレは暴対法の対象にならないため、警察に頼ることもできないのだ。
「月々の家賃と同額の住宅ローンでマンションが買える」というセールストークにはご用心。ローンには終わりがあるが、維持管理費はどこまでもつきまとい、「負」動産が生まれるのだ。 (朝日新聞出版 810円+税)
「すべてのマンションは廃墟になる」榊淳司著
アメリカでも持ち家は「アメリカンドリーム」の象徴。そこでは「ノンリコース」タイプの住宅ローンが一般的。ローンの借り手が返済不能に陥ると金融機関が抵当権を行使して差し押さえる。借り手が物件を放棄すると、そこで返済を免れる「非遡及型融資」のことだ。
しかし、日本ではこれは事実上ないも同然。むしろ一般的な35年ローンで利子と元本を金融機関に払い続けながら、やっと完済した35年後にはマンションは老朽化という無残な現実しかないのだ。
住宅ジャーナリストの著者は本書で冷酷な現実を突きつける。 (イースト・プレス 861円+税)
「限界都市」日本経済新聞社編
人口減少で消滅寸前の「限界村落」ならぬ限界都市? それは人口流入で一見活気あると見える東京近郊の話。
たとえばタワマン乱立で話題になった武蔵小杉。早朝から駅に入る人の列が数十メートル。昔からの戸建て住人はタワマンに日差しをさえぎられ、1時間半おきに「家の中が真っ暗」だという。
人口減と一極集中に悩むニッポンの矛盾の縮図を、データ分析とかつての人気の街の現地取材で浮き彫りにする。 (日本経済新聞出版社 850円+税)