「人喰い――ロックフェラー失踪事件」カール・ホフマン著、古屋美登里訳
1961年11月、ニューギニア島とオーストラリア北岸の間に位置するアラフラ海で、ニューギニアの少数民族、アスマット族のプリミティブアートを収集していたマイケル・ロックフェラーが行方不明になった。
マイケルの祖父は石油王のジョン・ロックフェラー、父のネルソンはニューヨーク州知事で後の副大統領というロックフェラー家の御曹司だ。結局、消息は掴めず、代わりにマイケルはアスマット族の男たちに殺され食べられたという驚くべき報告がもたらされた。
なぜこの食人行為が行われたかについては、事件の4年ほど前に起こった、オランダ人統治者による現地人襲撃への「復讐」だという見解がすでに示されていた。
しかし、その報告に現地の声が反映されていないことに疑義をもった著者は、事件から50年後の2012年に現地を訪れた。アスマット族たちとじかに交流をすることで、彼らの文化の中においてこの事件がどのように位置づけられるのかを内側から探っていこうというのだ。
既存の調査や記録からは理解しえないカニバリズムの「なぜ」に鋭く迫った衝撃のノンフィクション。
(亜紀書房 2500円+税)