「サバティカル」中村航著

公開日: 更新日:

 大学卒業後、エンジニアとしてひたすら働き続けた梶は33歳になって、現在の職場を辞め、新たな職に就くことにした。その移行期間でぽっかりと5カ月間の空白ができた。思いもかけぬサバティカル(長期休暇)だ。

 そこでまず「To Doリスト」を作る。「百年の孤独」を読む、「フェルマーの最終定理」を完全理解する、アコギで「Blackbird」を弾けるようになる、油絵を描く……。そんな計画を抱いて長い休暇が始まったある日、公園で老人から「ショーギできる?」と声をかけられた。

 将棋が上達することを新たにリストに加えた梶は、老人がずっと前に別れた娘に会いたがっていることを知る。娘の捜索を買って出た梶は、彼女の居場所を突き止め、思い切ってその娘、香奈と会ってみる。するとなぜか意気投合し、香奈と話しているうちに、梶は自分が、他人に恋愛感情を持てない「アセクシュアル」であることを打ち明ける……。

 降って湧いたような長い休みの中で、自らに課題を課し、自分の生き方を見つめ直す梶。「人生の夏休み」をファンタスティックに描いた、大人の成長小説。

(朝日新聞出版 1400円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    三浦大知に続き「いきものがかり」もチケット売れないと"告白"…有名アーティストでも厳しい現状

  2. 2

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  3. 3

    サザン桑田佳祐の食道がん闘病秘話と今も語り継がれる「いとしのユウコ」伝説

  4. 4

    松嶋菜々子の“黒歴史”が石橋貴明セクハラ発覚で発掘される不憫…「完全にもらい事故」の二次被害

  5. 5

    NiziU再始動の最大戦略は「ビジュ変」…大幅バージョンアップの“逆輸入”和製K-POPで韓国ブレークなるか?

  1. 6

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  2. 7

    下半身醜聞の川﨑春花に新展開! 突然の復帰発表に《メジャー予選会出場への打算》と痛烈パンチ

  3. 8

    モー娘。「裏アカ」内紛劇でアイドルビジネスの限界露呈か…デジタルネイティブ世代を管理する難しさ

  4. 9

    伸び悩む巨人若手の尻に火をつける“劇薬”の効能…秋広優人は「停滞」、浅野翔吾は「元気なし」

  5. 10

    小松菜奈&見上愛「区別がつかない説」についに終止符!2人の違いは鼻ピアスだった