「炎天夢 東京湾臨海署安積班」今野敏著
東京湾臨海署に、江東マリーナで死体が揚がったとの報が入り、強行犯第1係、通称安積班の面々が現場に駆けつける。被害者はグラビアアイドルの立原彩花。絞殺後、海に遺棄されたとみられるが、彼女のサンダルがマリーナに係留されていたプレジャーボートの船上で見つかる。
船の持ち主はプロダクションサミットの柳井武春。柳井は元暴力団員で彼に逆らうと芸能界では生きていけないといわれるほどの実力者だ。しかも、彩花は柳井の愛人だという噂もある。捜査本部は柳井を被疑者として捜査に当たる方針で固まったが、白河刑事部長だけは違う見方を示した。13年前の芸能プロダクション社長の死に柳井が関与したのではないかとされたが、事故として処理されたその捜査責任者が白河で、以後2人は親しい付き合いをしているらしい……。
第1作刊行から30年を超える長寿シリーズの最新刊。事件そのものよりも捜査に当たる捜査員たちの心理が細やかに書かれるのがこのシリーズの魅力。本作も安積以下お馴染みのメンバーの個性が光っている。
(角川春樹事務所 1700円+税)