「夢見る帝国図書館」中島京子著

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 小説家志望のフリーライター「わたし」が、国際子ども図書館の取材をした帰り道、公園で喜和子さんなる人物に遭遇するところから物語は始まる。喜和子さんは根っからの本好きで、なぜか「わたし」に図書館が主人公の小説を書くよう勧めた。図書館に通いがてら喜和子さんと定期的に顔を合わせるうち、戦後、上野で過ごしてきた喜和子さんの過去と、日本で最初の国立図書館がたどってきた歴史が少しずつ見え始める。しかし、「わたし」が小説家となり、生活も変わる中で次第に喜和子さんと疎遠になってしまう。ふと会いたくなって立ち寄った上野に、すでに喜和子さんの家はなかった。「わたし」はつてをたどって、喜和子さんを探し始めるのだが……。

「小さいおうち」で直木賞を受賞後、「妻が椎茸だったころ」で泉鏡花賞、「長いお別れ」で中央公論文芸賞など、近年賞ラッシュの著者による最新作。主人公は、喜和子さんに導かれるようにして図書館の歴史をひもとく。資金難や戦争などをかいくぐり、本を愛する人を見守りながら生き延びてきた図書館に対する万感の思いが、本書にはつまっている。

 (文藝春秋 1850円+税)

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