「クロード・シャノン 情報時代を発明した男」ジミー・ソニ、ロブ・グッドマン著 小坂恵理訳
私たちはパソコンや携帯電話、インターネットやメールを当たり前に使う情報時代を生きている。この時代はいつ、誰によってつくられたのか。科学の歴史を少しだけ遡ると、1人の天才の名が浮かび上がる。クロード・シャノン。情報、通信、暗号、データ圧縮など、今日の情報社会の土台をつくった数学者、電気工学者で、「情報理論の父」と称される。ニュートンやアインシュタインに勝るとも劣らない天才の生涯を、2人のジャーナリストが描いた本格評伝。
1916年、アメリカ・ミシガン州北部の小さな町ゲイロードで生まれたシャノンは、子どもの頃から機械いじりや暗号解読に夢中だった。ミシガン大学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学へ進み、巨大な「アナログ」コンピューター「微分解析機」の調整作業を任された。そして程なく、機械いじりが得意な天才は、世界を変える発見をし、アイデアを世に送り出す。
1937年に発表した修士論文「継電器と開閉回路の記号的解析」は、すべての情報は「1」「0」の信号として瞬時に伝えられることを示し、「デジタル」コンピューターの可能性を示唆していた。
この論文によって若くして認められたシャノンは、その後も遺伝子研究、暗号解読、AIの原型の発明、チェスコンピューターの製作など、好奇心の赴くままにやりたいことをやり続けた。情報の単位に初めて「ビット」を使ったのもシャノンだった。
功績に対する見返りには執着がなかった。万能型の天才だが、実像は内気で謙虚。ジャグリングを楽しみ、一輪車に乗り、クラリネットを吹いた。火を噴くトランペットや機械のネズミをつくって遊ぶなど、面白がる天才でもあった。
晩年はアルツハイマー病になり、2001年に84歳で永眠したが、私たちの今の生活がシャノンの功績の上に成り立っていることは間違いない。
(筑摩書房 2500円+税)