「いけない」道尾秀介著
白蝦蟇シーラインを南下するとき、左手の弓投げの崖を決して見てはいけないといわれている。安見邦夫が車でシーラインの先にあるトンネルに入ると、前方で白い光が明滅していた。ハザードランプの黄色のカバーを白に付け替えたらしい。車線変更してやり過ごそうとしたとき、停車車両がいきなり動いた。
3カ月後、白蝦蟇シーラインを走っていた男は、トンネルの左壁に花が置かれているのを見た。あのとき、あのセダンが突っ込んだあたりだ。見るはずのないものを見た気がして車を降りると、雑草の上に白いプラスチック片が落ちていた。
3つの物語が絡み合い、ラストの1ページで真相が暴かれる、驚愕のミステリー。
(文藝春秋 1500円+税)